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第3回チェコ会議


「普遍的価値をベースにおいた協力」
第3回チェコ会議
2011年11月19日、チェコ共和国クトナー・ホラにて
勝本 義道 代表の演説


チェコ・コンファレンスの諸先生方、そして、国内外からお集まりの紳士淑女の皆様、私はこのような意義ある会議にお招き頂き、その上、皆様の前でスピーチさせて頂ける光栄に心から感謝申し上げます。

さて、21世紀を迎えて10年の歳月が流れ
勝本代表のスピーチ
ようとしている現在ですが、今日の世界の情勢は決して楽天的状況にはありません。
逆に、政治、経済、軍事問題など全てにおいて、混沌とした危機的状況に至っており、かつて人類が経験したことのない、地球的規模の危険水位に達しつつあります。
今、人類は、かつて大きな誤りをした戦いによる問題の解決を選択するのか、それとも、互恵的な愛の関係を築いて恒久的平和世界を出発させるのか、明かに分岐点に立っているといって過言ではありません。
皆様! 今こそ人類は歴史的に築き上げられた英知の上に立つ、新しい普遍的価値観が必要なときがやってきています。それは、人間の特質である理性による真理の探究が重要であり、特に哲学と科学にその大いなる使命が託されています。
なぜならば、哲学は諸学の基礎となる学問であり、人間の思考の根本を形成するものだからです。かの哲学者ルネ・デカルトの言った「我思う故に我あり」とは、人間の持つ「自然の光である理性」を用いて真理を探求していこうとする、人間の本質を見抜いた言葉であり、近代哲学の出発点となった言葉です。
人間は心の中に思う「考え」によって行動し、人生や社会を築き上げていきます。即ち、社会や国家、もっと広くは世界の状態に至るまで、人間の心の中の表れだと言うことができます。その心を形成する大きな要素が理性による考えであり、存在における意味と価値のとらえ方なのです。
ユネスコ憲章には、その前文の冒頭に「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。」と記されており、「平和が、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない。」と、明確に宣言されています。
科学の役割はいかなるものでしょうか。科学は宇宙の物理的真理を探究し、諸科学の原理を探してきました。それは、人間の衣食住における環境の充足に大いに貢献しました。また、もう一つの側面においては、人類が長い歴史を通じて信じてきた、宗教における盲目性からくる、暴走や堕落の健全化にも貢献したと言えるでしょう。
科学は常に現実に目を向け、論理的で客観的な事実に則って、人間に対して実体的な幸福を提供する手助けをしてきたのです。しかし、科学にも問題がなかったわけではありません。それは、科学には人間の幸福を考える上で最も大切な「価値論」の研究が忘れられてきたことです。その結果、科学には倫理道徳が失われ、人間の最も本質である“精神的な有り様(よう)”が備えられていないため、人間に幸福を与えなければならないはずの科学的成果が、逆に、戦争兵器として利用され、心の幸福を置き去りにした物質文明を築き上げてしまいました。
先進国において、物質だけに偏った飽食の時代を一時期築き上げましたが、それは、決して万民が平等に豊かさを手に入れた社会ではなく、虐げられた者たちの上に立てられた格差社会であり、精神的枯渇状態は多くの精神疾患や、自殺者、社会犯罪を生み出していったのです。物質だけが豊かになった社会は、人間の本質からかけ離れた、病んだ社会を生み出してしまったと言えるでしょう。
私は、人間が本来の自然の心を取り戻さなければならないと思います。 それは、決して原始時代の生活に帰ろうというのではありません。人間本来の精神的な生き方、人間の本質的価値観に目覚めて生きようという意味です。
そこで、人間の精神的本質はどこにあるのかを考えなければなりません。私は、人間の最も本質的な特質は、理性だけではなく、心の持つもう一つの素晴らしい特質としての“情操性”を挙げなければならないと思います。情操性とは、肉体の持つ動物的本能や、情欲を指すものではありません。この言葉は東洋の独特な言葉なのかもしれませんが、精神的で霊的(spiritual)な、高くて味わい深い精神世界を指す人間の感性です。それは、芸術的であり、宗教的な感性とも一致するものだといえるでしょう。
感動や、愛することの幸福感は、数学的計算や知的分析によっては得られません。愛する妻の笑顔も、それを疑い知的分析を重ねるほどに混沌となり、結論を導き出すことはできません。
幸福の原点は、人間の情操性による感性の度合いによって得られるものです。感動や驚き、愛の喜びは、心の情的感性によって実感的に感じ取るものなのです。それは、ときには盲目性も必要であり、想定外の結果も必要です。人間はロボットではありません。情操的な存在なのです。
さて、本日のタイトルである「普遍的価値をベースにおいた協力」とは如何なることでしょうか。それは、理性における真理と、情操性による幸福感の共通的感覚によって普遍的価値を生み出すのだと思います。それを可能に成し得るのは、現在の最先端科学と情操性を調和させた、哲学的研究によらなければなりません。そして、協力とは、互恵的関係を築くということです。それは、愛なくして成し得ないことです。
現在の世界は、人類が歴史的に築き上げてきた価値観や経済理論が崩壊し、混沌とした暗闇の中に陥っていますが、決して失望することはありません。旧約聖書には第一章に「初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵(しんえん)の面(おもて)にあり、神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。『光あれ。』こうして、光があった。神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。」と記されているように、ことの始まりは混沌とした暗闇から始まるのです
一般的には、朝が始まりの時のようですが、なぜ聖書には暗闇から始まったと記されているのでしょうか。それは、準備の期間を指しているのではないでしょうか。新しい科学的な発明がなされるとき、あるいは、新しい時代がつくられるときは、突然訪れるのではありません。必ず、闇の中をさまようような混沌とした期間があり、そして、そこで深く考え、研究し、努力を重ねることによって、夜明けの時を迎え、美しい朝の太陽の光を受けることができるのです。
今、人類は素晴らしい朝の時を迎えるための、夜の時代にさしかかっているのです。それは変化の前兆であり、希望の時代が到来することを予告する現象です。下を向いて絶望するのではなく、上を向き、夜空に輝く星々を見つめながら、宇宙の神秘の中から、恒久平和を創り出すための普遍的価値を見いだしていこうではありませんか。希望を抱いて不可能を可能にすることができるのも、人間に与えられた素晴らしい特質だと私は考えます。
この、チェコ・コンフィデンスにお集まりの皆様が、美しい朝の光を輝かせる使命を持った人たちであることを信じて疑いません。

ご清聴ありがとうございました。

 

*日本人間学会専務理事として出席

 

 

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